(要約)
前回、春ウコンで、脳腫瘍が消失したという記事に出会って、その原因を調べてみました。この記事では、春ウコンと、サメの軟骨を同時に摂取したと書いてありました。春ウコンは、秋ウコンに比べるとクルクミンの含有量が1/10しかない代わりに、精油の量が多めに含まれています。クルクミンは、1つの有効成分と考えられているわけですが、不思議なことに、春ウコンの方がクルクミンが少ないのに、有効事例が多く発表されています。幾つかの事例から導かれる仮説のキーワードは「油」です。
クルクミンは、そのままでは体内吸収率が低いと考えられています。クルクミンをナノサイズに細粒化して吸収率を向上させ、これに魚油(DHA)を加えたものが、特に低濃度では、腫瘍に対して相乗効果を奏するという研究成果があるようです。油がクルクミンの体内吸収率を増加させていると考えると、これらの研究の理屈が通りますね。もちろん、DHA単独の薬効もあるのでしょう。
細胞が増殖するには、リン酸の働きが欠かせないようです。ガン細胞におけるリン酸化を阻害する抗癌剤としては、副作用が強いという「イレッサ」が有名です。これとは少し原理は異なるようですが、クルクミンは、この際、マイクロファージからの炎症性サイトカイン等を弱めて、発癌性を促進する特定因子のリン酸化を抑制して、ガン細胞の成長を抑制します。マイクロファージには活躍して貰いたいが、炎症性サイトカインの大量発生によって、ガン細胞が成長するのは困るわけです。考えようによっては、炎症性サイトカインで、十分にガン細胞を殺すことができればよいが、殺せなければ、逆に成長する原因を与えてしまうということかと思われます。
マイクロファージなどの免疫システムが活躍するために、「免疫寛容」(ガンの免罪符)が邪魔になります。これがあると、ガンは攻撃されません。この免罪符を取り消すためにも、クルクミンは機能しているようです。
(I)研究の事例
(1)Nemours Centerの研究(ドイツ)
NEMOURSの記事
http://www.nemours.org/mediaroom/news/2012/braintumortreatment.html
クルクミンが特定のタンパク質に結合し、ガン細胞の成長を抑制する。
Tuesday, January 31, 2012
Wilmington, DE - Recently, BMC Cancer reported promising findings from the Nemours Center for Childhood Cancer Research, in Wilmington, about the potential for components of a common spice to be effective in treating brain tumors in children and in identifying which children may derive the most benefit.
①curcumin can kill human medulloblastoma cells.
②curcumin reduces tumor growth.
③curcumin increases survival in models of medulloblastoma.
④curcumin can be effective in crossing the blood-brain barrier.
⑤curcumin binds to and crosslinks a specific protein (Cdc27/APC3), halting cell growth at a “checkpoint” for extended times thus forcing the cells to undergo programmed cell death.
⑥checkpoint proteins are tightly regulated during normal cell growth and are often being modified depending on the cell cycle.
⑦curcumin binds more resolutely to this specific protein when it is phosphorylated, a modification usually found in fast-growing cells such as cancer cells.
⑧these cells are much more susceptible to curcumin-induced cell death than cells that have only the unphosphorylated protein.
⑨ The results not only provide a possible explanation for why curcumin targets tumors with minimal side effects on normal cells, but also suggest that the phosphorylation status of the protein could be developed as a biomarker to predict which patients might respond favorably to curcumin-based cancer therapy.
⑩Anaphase-promoting complex/cyclosome protein Cdc27 is a target for curcumin-induced cell cycle arrest and apoptosis: BMC Cancer.
論文
http://www.biomedcentral.com/1471-2407/12/44/abstract
(2)台湾の海洋大学の研究
ウコンの成分(クルクミン)と、魚の油を、一緒にカプセル化して、摂取すると、脳腫瘍に対して、効果的であった。カプセル化には、シリカとキトサンを用いた。なお、キトサンはナチュラルの植物繊維で、甲殻類の外骨格に含まれる多糖類、キチンから得られ、血液中の脂肪の吸収を抑え、脂肪を落とし、筋肉を残すダイエット食品でもある。
魚油の量が、何か関係しているようですが、論文の元を確認していないので、良く分かりません。英文アブストラクトを読むと、魚油が少ないと、腫瘍細胞の生存率を上げるかもしれない、と記載されています。
http://www.chang123.ntou.edu.tw/thesis.html
多形性膠質母細胞瘤是最常見也最具威脅性的腦腫瘤,通常患有此癌症者即便在手術後同時接受放射線治療及化療,也僅少部分患者能存活超過十五個月。由於慢性發炎反應在近期研究中顯示與惡性腫瘤生成相當有關,因此如何能藉抑制慢性發炎達到抑制腫瘤產生及惡化,是個重要的議題。薑黃素與魚油,均為常見的機能性食品成分,並都具有抗氧化與抗發炎的生理活性。然而薑黃素與魚油在生醫方面之應用都常受限於其天然特性,如易於氧化及薑黃素生物利用率低等缺點。因此本論文利用奈米藥物遞送系統,探討製備內含有薑黃素與魚油的奈米微粒,其物理化學特性及抗癌活性。在本論文中,以二氧化矽與幾丁聚醣做為奈米微粒的包覆材料,透過生物矽膠化法 (biosilicification) 包覆薑黃素魚油混和液,製作薑黃素奈米微粒。經掃描式電子顯微鏡觀察,其粉末外形為以顆粒為單位聚集成之塊狀物,粒徑約在一百奈米上下,透過動態光散射儀觀察,其數量平均粒徑與體積平均粒徑分別為 141.36 ± 61.22 nm 與 582.37 ± 18.91 nm,表面電荷為 -18.54 ± 0.63 mV。在細胞的生物活性試驗中此奈米微粒被細胞攝取情況較純薑黃素為優,且抑制腫瘤細胞生長之效果於高劑量時明顯較薑黃素或魚油單獨使用時良好,並且增加腫瘤細胞的細胞凋亡現象;同時此奈米微粒也可抑制發炎反應的產生,顯示此奈米微粒具有良好的抑制癌症功能。
Glioblastoma multiforme (GBM) is the most aggressive and common kind of brain tumors, few patients suffered from this can survive over 15 months even treated with surgery, chemotherapy or radiotherapy. Since chronic inflammations are associated with malignancies, it is important to prevent inflammation-mediated neoplastic formation, promotion and/or progression. Curcumin and fish oil were both excellent functional foods that can acts as potent anti-inflammatory and anti-oxidative stress agent in our body. However, fish oil is easily oxidized, and the application of curcumin has also been limited by its low bioavailability. In this work, curcumin and fish oil were encapsulated into silica and chitosan, creating curcumin-fish oil-loaded chitosan-silica nanoparticles. The number mean particle size and volume mean particle size of this nanoparticle were 141.36 ± 61.22 nm and 582.37 ± 18.91 nm, respectively. The curcumin encapsulation efficiency of it is 99.94 ± 0.08%. In this research, we found CFCSNP has better anti-tumor activity than fish oil and curcumin alone or even their mixture. It also can decrease inflammation reaction by reducing the production of nitric oxide. We also found that the low dose fish oil might raise the survival rate of tumor cell.
(3)脳腫瘍サイズが81%縮小したという記事
http://www.youtube.com/watch?v=oP7S5VDHtFY
Used in the ancient Chinese and Indian systems of medicine, curcumin is a naturally powerful anticancer compound that has been found to decrease brain tumor size in animals by 81 percent in more than 9 studies. A derivative of turmeric, curcumin is the pigment responsible for turmeric's yellow-orange color. Each 100 grams of turmeric contains around 3 to 5 grams of curcumin, though turmeric is a also very powerful on its own. New studies are shedding light on curcumin, and illuminating its numerous benefits on cancer and other diseases.
(4)マウス実験の結果(クルクミン+DHA):
http://www.encognitive.com/files/Prevention%20and%20Treatment%20of%20Pancreatic%20Cancer%20by%20Curcumin%20in%20Combination%20With%20Omega-3%20Fatty%20Acids_0.pdf
クルクミンとDHAを混合して使用したところ、腫瘍サイズが4~5分の1程度になった。
(5)乳癌の臨床結果(クルクミン+DHA)
http://www.biomedcentral.com/1471-2407/11/149
クルクミンとDHAを混合して使用したところ、乳がんに対して効果があった。
Breast cancer is a collection of diseases in which molecular phenotypes can act as both indicators and mediators of therapeutic strategy. Therefore, candidate therapeutics must be assessed in the context of multiple cell lines with known molecular phenotypes. Docosahexaenoic acid (DHA) and curcumin (CCM) are dietary compounds known to antagonize breast cancer cell proliferation. We report that these compounds in combination exert a variable antiproliferative effect across multiple breast cell lines, which is synergistic in SK-BR-3 cells and triggers cell signaling events not predicted by the activity of either compound alone.
(II)肺がんに対する事例
(出典「ガンは癌にあらず」著者:山形大学客員教授:松井良業、名誉教授:粕渕辰昭)
(1)肺がんに対する事例1
・生の春ウコンを一日に30g接種(乾燥品の換算で6g:含有率1%ならクルクミン量は60mg)
・患部にカイロをあてる。
(効果)40日後に寛解し、60日で消失。150日間摂取を辞めると再発したが、同様の処理を行うと、30日で消失した。
その後、イレッサを使用すると、40日で急逝。
(2)肺がんに対する事例2
・制癌剤(シスプラチンなど)による治療を数クールしたが悪化
・春ウコンを摂取(1日30g(3分割))
・1か月で病状が回復
・その後、制癌剤投与を2クールと放射線治療を始めてか20日後に急逝。
(3)肺がんに対する事例3
・実業団の水泳の選手、同様の条件で春ウコンの粉末を摂取。
・1年後には回復し、3年後に完全復調。
(4)肺がんに対する事例4
・CT検査で肺の左下に白い影。
・50錠/日(5分割/日)
・総合ビタミン剤2錠/日
・ヨーグルト(オリゴ糖をたくさん加えて腸内免疫を向上させ, 食事を高蛋白質化する)
・14日後、再検査で、白い影は消失(寛解状態)。股関節の痛み低減、喘息が治まる。
・4か月後、異常が確認されず。
(5)肺がんに対する事例5
10月21日のCT検査後、摂取を始める
・春ウコン60錠(6g)/日(3時間毎に10錠),
・ 総合ビタミン剤ポポンS2錠/日,
・オリゴ糖入りヨーグルト(腸内細菌の善玉化)
11月13日の検査で消失。
(6)肺がんに対する事例6
・右腎癌の手術後110日の間、春ウコンの摂取を中止、その後、肺に6ヶ所の癌が発生。
・ネクサバール錠200mg(バイエル薬品) 4錠/日
・春ウコン6g/日の摂取
・14日後、歩行困難となり、ネクサバール錠中止。春ウコンは継続した.
・22日後、春ウコン粉末の摂取量を8g/日(6~7分割, 秋ウコン分を除外)に変更
・その後、癌の数が4か所に減少。30%まで減少
(III)ウコンの特性
(i)特徴
(春ウコン) 含有成分:黄色色素(クルクミン)
精油(秋ウコン2倍~)
(秋ウコン) クルクミンの含有量は、春ウコンの10倍。
精油
(品質):
・春ウコンは、鮮やかな黄色(金色)で香りも強い方がよい。
・クルクミンの含有量:産地によって、10倍程度の開きがある(0.2%~4%)。「出典「市販ウコン末の品質評価」:三重保環研年報第6 号(通巻第49 号),52-54 頁(2004)」
・乾燥したものは、生の20%の重量になる。
(ii)クルクミンの効用
クルクミンは、水溶性が低く、バイオアベイラビリティ(体内吸収率)が、課題となっている。この課題を解決する方法は、クルクミンを細粒化して、コーティングするというものである。また、魚油との相乗効果が確認されている。
(クルクミン)
ナノメートルサイズのクルクミン、販売されていました。「セラクルミン」といいます。
(東京銀座クリニック:電話(03-5550-3552))から引用)
http://www.1ginzaclinic.com/curcumin/theracurmin-MDX.html
高吸収性クルクミン配合サプリメント
180カプセル入り(1カプセル当たりクルクミン30mg)
製造:株式会社セラバリューズ
価格:21,600 円(税込み)
健康増進やがん予防の目的では1日1~2カプセルを服用します。
がん治療の目的では、がんの進行状況や治療の状況に応じて、1日3~9カプセルを目安に服用します。がん治療に併用する場合は、病状や治療状況を伺って服用法を決めますので、ご相談下さい。
5カプセルずつだと、36日分ということですね。。
直販だと30粒入り、3980円
http://item.rakuten.co.jp/theravalues/c/0000000122/
どちらが安いかな。。東京銀座クリニックの方が安いですね。。
(薬効)
脳の神経障害を防ぐ
アルツハイマー病を防ぐ
認知症を防ぐ
抗炎症作用
抗酸化作用
血液循環の向上
(抗がん作用)
武器である転写因子NF-κB( Nuclear Factor-kappa B)が単独で存在すると、これが悪者の癌細胞内に入ると、発癌性を促進する酵素である:
①誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)、
②シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)
が合成され、癌の細胞死(アポトーシス)が起こりにくくなり、増殖速度が上昇する。
武器NF-κBは、通常は、警察官のタンパク質IκBに結合しているが、マクロファージに炎症性のシグナル等が来ると、リン酸化が生じて、IκBが分解して武器NF-κBはフリーになり、悪者の癌細胞内に入ってしまう。クルクミンはIκBの分解を阻止するので、癌のアポトーシス誘導が起こり、増殖が抑制される。抗がん剤感受性も高まると報告されている。免疫系のマイクロファージ、リンパ球は、癌細胞への攻撃を見逃してしまうことがある(免疫寛容)。この原因には酵素IDOがある。クルクミンは、IDOを抑制して、免疫寛容を阻害し、抗腫瘍免疫を高める。多くの癌ではIDOの高発現が認めらている。
(注)
(炎症性のシグナル等)
炎症性サイトカイン:IL-1, TNF-α、
炎症性刺激:リポポリサッカライド(LPS)、
酸化ストレス(紫外線、放射線、活性酸素)
反対の事例(マウス実験);
(講演)リポ多糖の経肺投与による局所的な抗腫瘍効果の発現「マクロファージは肺がん治療の救世主!肺がんはマクロファージ活性化物質を吸って治せる」東京理大薬 ○澤地圭一、大石雄介、谷口裕亮、牧野公子、寺田 弘、香川大医 稲川裕之、河内千恵 、徳島文理大 杣源一郎
肺に直接LPSを供給することで、極めて微量の LPS の投与量で非常に優れた治療効果が認められる。LPS を直接肺に投与することで懸念される肺の炎症に関して検討した結果、炎症は生じない。
LPSはシグナル伝達経路を介して種々の炎症性サイトカインの分泌を促進する作用がある。サイトカインの産生は細菌を除去するための生体防御反応として行われるが過剰になった場合に毒性が発現し、ショック状態に陥る(エンドトキシンショック)。また、LPSは抗原提示細胞である樹状細胞やマクロファージを活性化し、未分化なT細胞(ナイーブT細胞)を1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)へと分化誘導する働きを持つ。
(CPL・霊芝)
多糖体は、オリゴグルカンを生成し、マクロファージを起こすことができる。
(リン酸化)
炎症性のシグナル等によって、IκBキナーゼ(IKK)が、IκBにリンを結合させ、さらにユビキチンが結合する(ユビキチン化)。これにより、IκBが分解する。
なお、リン酸化の抑制は、多くの抗癌剤の作用でもある。ガンに対する選択的タンパク質リン酸化酵素阻害薬としての抗癌剤が有名である。
・グリベック:BCR-ABLチロシンリン酸化酵素特異的阻害剤
・EGFR:上皮成長因子受容体
・イレッサ:チロシンリン酸化酵素阻害剤(本来の肺がんに適用されるが、転移性の肺がんに使われたりすると間質性肺炎などの副作用に至り、問題となっている)
・ネクサバール:血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)チロシンリン酸化酵素阻害剤
・スーテント:VEGFR)チロシンリン酸化酵素阻害剤
(免疫寛容の阻害:悪者の免罪符)
抗原提示細胞の樹状細胞のあるサブクラスに発現するIDO(インドールアミン酸素添加酵素)は、抑制性T細胞を誘導し、ガン細胞における免疫寛容(悪者の免罪符)の成立に関与する。クルクミンは、活性化した樹状細胞のIDOを抑制して抗腫瘍免疫を高める(J. Biol. Chem. 284:3700-3708, 2009)。IDOは、アミノ酸のトリプトファンをN-Formylkynurenineへ代謝する酸素添加酵素で、ヒトの肺、小腸、胎盤など多くの組織に分布し、種々の感染症や炎症で強く誘導される。IDOの作用機序は局所的なトリプトファンの枯渇とその代謝産物(キヌレニンなど)による阻害作用と考えられている。
(魚油)
(オメガ3系不飽和脂肪酸)
魚油というと、抗癌のサプリメントとして、DHAが知られています。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3系不飽和脂肪酸は、がん細胞の増殖を抑制し、腫瘍血管新生を阻害し、がん細胞に細胞死(アポトーシス)を引き起こすといいます。このクルクミンとDHAを混合して摂取すると、効果があるということでしょうね。
(オメガ6系不飽和脂肪酸)
一方、オメガ6系不飽和脂肪酸は、がん細胞の増殖や血管新生を促進するそうですから、悪者ですね。